ジャック・ルコック(Jacques Lecoq)

1921年 パリ生まれ、1999年 パリ没。

演劇教育者、演出家、俳優。

 


…日本人の入学は私で4人目だっただろうか。「本質を発見し、それを転換して表現するのが芸術」というのが、俳優、演出家であったルコックの考え方の基本で、既成のスタイルを反復するのではなく、自らが想像できる演劇人を育成することが彼の理念だった。当時1学年30人ぐらいの学生がいて、3か月ごとに落とされていくので厳しかった。ルコックの授業では舞台上での身体の重要性を教えられ、即興でも「わからなくてもすぐやれ、待っていてはダメだ」としかられた。授業を一度休んだら一か月間も口をきいてくれなかった。それほど教える側も真剣なのだと実感した。ルコック先生とは亡くなるまで交流が続いた。「死ぬまで動け」と言っていたが、彼自身、芸術面で探求を続け、晩年は建築と演劇の関係について関心を抱いていた。

(2001年9月6日付 日本経済新聞 掲載文より抜粋)


撮影:岡村啓嗣 ルコック国際演劇学校にて
撮影:岡村啓嗣 ルコック国際演劇学校にて

…井田氏が最も尊敬する演劇と人生の教師であるルコックさんは、現代演劇の知性として知る人ぞ知る存在だが、その本質を捉えた身体論と演出論は、ヨーロッパは勿論、世界でも優れた理論とユニークな「メソッド」として専門家の中でも高く評価されている。1987年の秋、井田氏に案内されてパリにルコック夫妻を訪ねた。数年ぶりに会うというルコック先生夫妻は井田氏を本当の子供のように、固く抱擁し、慈愛に満ちた眼差しと深い愛情ある言葉で、ミラノにおける彼の活動と健康を祝福した。精神性や方法論ばかりではなく、ルコック夫妻は、井田邦明にとって血や肉体までも祝福と支配を受けた「邦明のヨーロッパの父と母」だったのだと、その時、感じた。感動的な師弟の対面だった。

(日本航空ビジネスクラス機関紙「AGORA」1995年3月号掲載 勅使河原平八氏 寄稿文より抜粋)


ジャック・ルコック演劇学校在学中の井田邦明


ジャック・ルコック国際演劇学校修了証書


「Le Corpos Poétique」(原語版)

 (邦訳「詩を生む身体」) 

ジャック・ルコック著


「Corpo Poetico」(イタリア語版)

 井田邦明の生徒が翻訳。


1990年8月 ルコックのWSのパンフレット 右/ルコック 左/井田邦明